リングは彼女に


 懐から煙草を取り出した。


 ジッポーで火を点け、大きく吸い込む。

 そして、吐き出すと、白い煙が寒空へと吸い込まれるように、スッと消えていく。


 それを見ると、理由は分からなかったが、おかしくて仕方がなかった。声を殺して、笑った。


 そして、その煙草はすぐに捨てた。


 なんだか、もう何をする気力も起きない。何をしても、意味が無いような気がする。


 自分はこんなにも弱い人間だったのかと気が付くと、再び情けない気分になった。


 そんな事を考えていると、急に視界がぼやけた。外灯や光を増し始めた街並み、車のヘッドライト、そして信号機、それらありとあらゆるものが、キラキラと輝いて見える。