リングは彼女に



「実はですね……この一連のプレゼント、去年父が私にくれたものなんですよ」店員は恥ずかしそうに言った。


「あの時は本当に驚きました」


「そうだったんですか、おもしろいお父さんですね」俺は彼女の父親を想像した。


「いえいえ、普段はとても真面目で、無愛想な人なんです。だから鼻眼鏡姿の時はさすがに笑ってしまいました」


「そうですよね。俺も親父がそんな事したら笑うな」親父の鼻眼鏡姿。考えただけで笑える。


「それじゃ、店員さんも、驚かされたお礼にプレゼント返してあげないとダメですね」


「ええ、そうしたいんですけど、父は自営業でクリスマスも忙しいんです。特に夜は稼ぎ時なので、クリスマスの翌日にでもあげようかと……ジャズが好きだから、ジャズのレコードなんかいいかもしれません」