「おお、そういえばな、子どもとかみさんに買うクリスマスプレゼント買ったよ。昨日会社帰りにデパートに行ってさ、息子には戦隊物のフィギュア、娘にはテレビゲームソフトの新しいやつ。そんでかみさんには指輪だ」


 それを聞いて心臓に槍が刺さった。何で指輪なんだろう。この間の事を思い出してしまう。


「かみさんには前もって何が欲しいかを聞いていたんだ。そんで結婚十五周年のクリスマスだから記念に指輪が欲しいんだとさ。お陰で財布が痛いよ」大塚さんは得意げに語っている。



 その時、言葉が口をついて出た。

「大塚さん。実は僕も先日、指輪を買ったんですよ」


「ほお! そりゃ奇遇だな。彼女に買ったのかい?」興味を持ったのか、身を乗り出して会話を急かす。


「ええ、彼女のために買ったんです。婚約指輪として……」


「そりゃあいいな。で、いつ結婚式なんだ? 是非俺も呼んでくれよ。友人代表として、祝辞でも……あ、歌も歌ってやるぞ。こう見えてもなかなかうまいんだ」



「それが……真剣に結婚を考えてたんですけどね……振られました」