「なんで、突然そんなこと……」


「なんでって、それ以上の理由はないわ。残念だけど、和人とは合わなかったの」


「考え直してくれないか?」既にワラにもすがる思いだった。


「ごめん。もう決めたの。和人には本当に悪いと思ってる。それに、このまま付き合い続けたら和人にも悪いし、私も苦しいのよ。だから、私はもう和人とはいられないわ」


 それから由美は席を立った。

 テーブルに置かれていた伝票を手に取る。


 そのまま彼女が帰ってしまいそうだったので、慌てて口を開いた。「ちょっと待ってくれ。本当にこんな終わり方なのか?」


「ごめん。本当にごめんなさい。ここの会計は私が持つわね」彼女は俺の言葉を無視した。そして踵を返し、そのままカウンターへと行ってしまった。



 俺は、もう呆然としてしまって、彼女の挙動を目で追うことしか出来ない。ただ、ぼーっと彼女の帰る様子を眺めていた。