その日の夜、時刻が九時を少し回った頃、自宅の自分の部屋で漫画を読んでいると、家の電話が鳴った。



 しばらくして、母が部屋のドアを開けて、電話の子機を持ってきた。




「和人、田渕くんから電話だよ」そう言って、子機を放り投げる仕草をした。


 俺は漫画本を閉じて、慌てて電話を受け取る。


「田渕くん、なんだか相当焦ってるみたいだけど、何かあったの?」母の問いに、さあ、なんだろうね? とだけ答えて子機を耳に当てた。


 母は頭の上にはてなを浮かべて部屋を出て行った。