夕刻、俺たちは自転車を走らせ、眩しい夕陽の光を全身に浴びていた。丁度、河川敷に差し掛かった時、田渕が口を開いた。


「成瀬、俺さあ……こんな事言えるのお前しかいないんだけど……」


 田渕が自転車のペダルを漕ぐ力をゆるめる。そして、ゆっくりと止まった。

「なんだ?」

 俺も同じように自転車を止め、地面に足をつけて自転車を支えるようにした。

「吉田さんっているだろ、うちのクラスの」

「ああ、吉田さん。いるな。彼女がどうかしたのか?」

 吉田怜奈さんは、俺たちの学年のアイドル的存在だった。


 一週間に一度は誰かから告白されていたが、吉田さんはそんな彼らを悉く振った。


 それでも挑戦者は沢山いて、人気が衰えることはなかった。


 彼女のファンクラブなんかもあるという噂を聞いたことがある。


 実際、俺も可愛いなと思っていた。


 そんな彼女の事だからか、田渕が何を言いたいのか薄々感づいていたのだが、あえて気付かない振りをした。


 すると、意を決したのか、田渕はこう言った。