「なかなかきれいじゃない」

 理那が部屋を見渡し、持っていた買い物袋を置いた。冷蔵庫を開けて、次々と買ってきたものを詰め込む。


「ほんとうに住み込むつもりなんですね」


 俺は自分の持っていた買い物袋に目を落とした。中にはシャンプーやリンスや歯磨きなどの洗面道具一式が入っている。


「うん。今日からここは私と和人くんの家になるわけ。頑張って家政婦やってあげるから、安心しなさい。いつもこんなのばっかり食べてたら体壊すよ」


 そう言って取り出したのは冷凍庫に入っていた冷凍食品。『レンジで簡単! 若鶏の唐揚げ』と書いてある。


「男の一人暮らしはみんな同じだと思いますよ。料理が出来ないわけじゃないんですが、疲れて帰ってくるとやる気もしないんです」

「そうなんだ。確かにそうだよね」


 買い物袋の中の食料品を全て冷蔵庫に入れると、理那はベッドに倒れこんだ。


「もう寝るね、疲れてるんだ。今日はうろうろ街歩き回ってたから」

「はあ、おやすみなさい」


「おやすみ。あ、言い忘れてたけど、私の衣類とかは宅急便で送ってもらうことにしたから二、三日で届くと思う。明日、前の彼にメールしておくから」



 そうして、理那との二人暮らしがはじまった。