奈央が小学校に入った頃から両親の仲に亀裂が入ってきた。



甘え声は怒鳴り声となり、母の泣き声と重なった。





「あの人と別れてください」



「うるさい、俺は浮気などしていない!」





それはやがて、二人の罵りあいに変わった。



「君は、俺を馬鹿にしてるんだ。まともな職にも就かず、君の両親が残した遺産を食い潰しているだけのただのヒモだってね」




「あなたが財産を遣うことを、私が責めたことありますか?結婚してからお金は二人のものよ。私が言いたいのはあなたがずっと囲っている・・・」



「人聞きの悪いこと言うなよ。あいつはお前と違って、自分でちゃんと稼いでいるんだ。だいたい君はいつもそうだ。何でも許すふりをして、その実ねちねちと俺を攻撃する」



「奈央のことを考えたことあるんですか!?」



「奈央を盾にするのはやめろ!!」



「もう、やめてっ!お父さんもお母さんも仲が良かった時のこと思い出して!」