中岡はプロポーズの日を境にやたら甘えるようになった。



「奈央、奈央!」



と彼女を探す。



かおりにそのことを話すと



「わぁーうっとうしい。人は見かけによらないものねぇ」



と笑っていた。



けれども奈央にはちっともうっとうしくなんかなかった。



自分に甘えてくるずっと年上の中岡を可愛くいとおしいと感じていた。



――そうだ、父に似てるんだ――



と奈央は思った。



子供の頃出て行ったきりの大好きだった父。


今も奈央の心は父を追ってふいにさまようことがある。


そして、それを中岡に求めているのかと自問自答したこともある。


しかし、彼女はそれでも良かった。中岡を愛していることに変わりはない。