「俺は今までボクシングで世界チャンプと戦うことを人生の目標として、最後の生きがいとして生きてきた。家族もいないし失うとしても自分の命だけだしな。怖いものは何もなかった」



「・・・今は?」



中岡の体温をじかに感じながら奈央は彼を見つめた。



「その後の目標が見つかったよ」



奈央は目を閉じた。



「俺は、タイトルマッチに勝っても負けても、それを最後に二度とリングには上らない。お前が卒業したら一緒になろう」



「けっ・・・こんしてくれるの?」



奈央は驚いて目を見開いた。



「ああ、お前の両親にも挨拶に行かないとな。・・・許してくれないだろうがな」



「それなら大丈夫よ!!あたしをもらって!!」






奈央は母が反対できないことを確信していた。