てん ―The pure story―




「どうして冷たくするのよ!あたしのこと見てたじゃない」



「なんのことだ?」



「えっ?ほらこのあいだレストランの窓ガラス越しに」



「知らないそ。だいいち俺は近視なんだ、ニメートル先はボケて見えない」



――なんだってぇ、じゃああたし馬鹿みたいじゃないの。ずっとお互い意識しあっていると思ってたのに――



奈央はがっくりとうなだれて歩いた。



「まあ、そうがっかりするな。近くで見たら結構美人だぞお前」



「ほんとぉ?」



「ああ、ほんとだ。テレビにでてる女優にも似てる」



「えっ、だれだれ?アヤセ?ナガサワ?」



「誰だそれは?そうだな、うーん確か時代劇の再放送に出てたな、名前に〔あ〕とか〔な〕とかついてたはずだ」



「何、それ!・・・あなたいくつ?」