「すばる、牛乳を残したら大きくなれないよ」



奈央は時計を気にしながら言った。



すばるはゆっくりとマグカップを口にもっていく。



「タマゴも半分でいいから食べてね」



皿をすばるの前に押しやる。



ぎこちない手つきで、スクランブルエッグが口に運ばれる。



「ごはんは?ごはんも一口ね」



自分の食器を片付けながら、奈央は早口で言った。



すばるはいやいやをした。食事させるのに奈央はいつも苦労していた。



早く朝食を食べ終わるよう急かすと、お弁当を保育園の黄色いショルダーバッグに入れた。



スモックのボタン掛けに手間取っているすばるを手際よく手伝いながら、奈央は自分の弁当をバッグに放り込むようにして入れ、上着を取った。



「すばる早く、遅刻するよ!」



すばるのあごに、被せた帽子のゴムを引っ掛けて奈央は言った。