「ぼく、自分の名前だって、もう漢字で書けるんだ」
二人の会話に割り込んできたタカシが、かおりの手をとってその手の平に人差し指でなぞってみせた。
「へえー、てんちゃんて天使の天と書いてたかしって読むんだ。なるほどね、それで天ちゃん」
かおりは感心したように大きく頷いた。
「井田天でイダテンだって。冗談みたいでしょう?お父さんたらサッカー選手になるには足が速くなくちゃと思ってそう付けたんだって。ちょうど名字がよかったから」
「なるほど韋駄天、足の速い神様ね。確かにスピードテクニックで彼の右に出る人は誰もいなかったわ。・・・・井田のお父さんてみかけによらず面白い人なのね」
かおりが深く頷いて、そう言った。
「そうなの、ベティママなんて笑いっぱなしよ。・・・そうそう、ベティママといえば今度施設に入ってた妹さんを引き取るんだって」
「えっ、ベティママって妹さんがいたの?」
かおりがビックリして聞いた。



