会った時、息子さんはずーっと土手でありを見てました。お腹をすかせて」




「たかしが言うには、家内がごはんを食べさせなかったらしいのです。たまに食べさせても犬の残りごはんを・・・私はこのとおりサラリーマンですので年中家にいる息子の世話は家内にまかせっきりで・・・私が悪いんです。家内の言いなりだから」




奈央は最初、責めるような態度で井田に接していた自分を恥じた。




――彼だって人生の狂った一人息子を抱えて何年も苦しんできたのだ。そして、こんな小娘にまで頭を下げている――



「いなくなったのは、一度や二度ではありませんでした。しかし、殆どはそこいらで泣きじゃくっているところを保護されてすぐに帰ってきました。けれども今回は違った。家内は警察に届けたと言ってましたが、嘘でした。そりゃあ、あいつがいなければ楽ですからね。実の息子な訳じゃないし・・・」






井田は奈央の肯定的な頷きに、安心して堰を切ったよに話し始めた。