てん ―The pure story―




ケンの車が、急ブレーキで止まった。



「てんちゃん、大丈夫!!」



奈央がタカシに駆け寄った。



「奈央おばちゃん、怖かったよー。このひとたち誰?」



タカシが奈央に擦り寄った。



「心配しなくていいのよ。もう大丈夫だから」



奈央はタカシを抱きしめて、そう言った。





「東郷さんじゃないですか?」



ユタカを睨みつけていた男が、車から降りてきたケンに声をかけた。



「そうだけど、君は?」



「俺の名前なんか言ったってしょうがないですよ。俺たちイダテンと並んであんたのこと尊敬してました。もちろん今でもです」



男はバイクから降りてそう言った。



「もう、乗らないんすか?」



「よしてくれよ、俺もう22だぜ。来年には親父になるんだ」



ケンは奈央と一緒にタカシを慰めているかおりを見て言った。



「もったいねーなぁ。・・・・じゃ、俺たちはこれで」



そう言って男は深々と頭を下げた。






男が右手を上げて、爆音は潮が引くように消えていった。