「申し訳ありませんでした」 奈央は保冷箱からローストビーフ用の肉の塊を差し出した。 三千円の値段がついているそれを、キャンキャン吠えるフランソワを抱いた中年女はひったくるようにして掴み取るとバタンとドアを閉めた。 「あーっもう!!毒でもねりこんでやりたい」 奈央は舌を出して踵をかえした。