午前六時、目覚ましの音。



手のひらが素早くストップボタンを探し当て、耳障りなベルを遮断。



その動作とは裏腹に今度はゆっくり手を引っ込め、けだるく寝返りをうつ。



静寂もつかのま、タイマーセットしておいた電気釜が炊き上がりの電子音を響かせる。





中岡奈央は布団の中で伸びをして、なんとか眠気を追い払おうとした。けれどまた、べったりと布団に伏してしまう。



ぎゅっと目をつむり、ばっと開く。奈央の瞳にあどけない寝顔が映る。



「えいっ」と、奈央は腕に力を込めて起き上がった。



「すばるのために、今日も一日頑張らなくちゃ」



奈央のパジャマを握りしめ眠っている幼い息子の頬に、彼女は愛情たっぷりのキスをした。それから、彼に裾を握らせたままパジャマの上着をそっと脱ぎ、奈央はそろそろと台所へ移動した。