さっきまでの苛立ちは、どっかにいってしまった。 莉子に泣かれると、どうしようもなくなる。弱いんだ。 「あ…いや、と、とりあえず家に帰ろ。なっ?」 莉子は首をブンブン横にふって、まだ泣いている。 あー…、ちょっと言いすぎた…。だけど今さら反省したって遅かった。 「ひっ…1人でっ…帰る…っ」 そう言って、俺に背中を向けて歩きだした。 ………1人で、 1人で帰すわけないだろ!! どこにも行かせたくなくて小さな背中を、両手いっぱいで抱き締めた。