「風花ーっ、おはよーっ」


玄関から大きな声が聞こえる。


「またうるさいのが来たぞ」


じーちゃんが不機嫌そうに玄関を指さした。


「うん!行ってくるねっ」


ご飯をかき込んで立ち上がった。


「あ、風花っ!お弁当っ…」


そうだそうだ、忘れてた。


「ちゃんと自分が作ったって言うんだよ?若い子が好きなもん入れといたからね」


「ありがと」


小声でばーちゃんにお礼を言った。


今から、


純とデートです。


デートって言っても、


サーファーになった純に付き合って、一緒に海について行くだけ。


私も純も、海が大好きだから。


「お待たせっ」


「おう!」


純が荷物を持ってくれて、車に乗り込んだ。


出発。


キレイな海を目指して。


私と純が、


何度も何度もあのブランコから見た海へ。


広い広い海へ。


たくさんの人が、


今日もあの海を見てる。


空を見てる。


太陽を見てる。


本っ当にたくさんの人が、


今この瞬間、同じものを見てる。


その人達の誰もが違う悩みや不安を持っていて、


それを胸に今日も頑張って生きてる。


私も…


全ての悩みがなくなった訳じゃない。


でも人はみな頑張って生きるもんなんだって思うと、


私も頑張れるよ。


たまには逃げたっていい。


また頑張ればいい。