放課後のブランコ

中々消えない手術室のランプ。


どんどん不安が押し寄せる。


「風花っ…」


誰かに呼ばれて顔を上げたら、加瀬君が松葉杖でこっちに歩いてきていた。


「じーさん大丈夫か?危篤なんだろ??」


え?


危篤?!


ばーちゃんを見たら、加瀬君を睨んで言った。


「危篤なんかじゃないよっ、縁起の悪い事を言う子だねぇっ。どこの子だいっ」


「え?違うのっ?!だってさっき救急車でっ…」


救急車?


「ばーちゃん、救急車で来たの?」


私がそう聞いたら、ばーちゃんは呆れた顔で答えた。


「違うよ、タクシーで来たんだよっ」


頭をポリポリかく加瀬君。


よくよく話しを聞いたら、


救急車で運ばれて来た人の家族とばーちゃんが重なって見えて、


じーちゃんが運ばれて来たと勘違いしたらしい。


でもその勘違いのおかげで、じーちゃんの目が覚めた時傍にいる事ができる。


「ありがとう」


そう言って、私の横に座った加瀬君を見た。


「俺って本当にバカだよな。あの元気なじーさんが危篤になる訳ねーしっ」


元気な…か。


また元気になってくれるといいな。


「加瀬君はその怪我どうしたのっ?!」


ここに、入院してるんだよねっ?!


「もう本当に格好わりぃんだけどさ〜。バカにすんなよ?」


「うん、しない」


どうしたんだろ?


「駅前の広場でさ…不良達がネコをいじめてたんだよ…」


ネコ…?


すぐにかなめ君が頭に浮かんだ。


“あのお兄ちゃんがケンを助けてくれた”んだよね???


「で、そのネコを助けに行ったらそいつらにボッコボコにされた。しまいには警察も来てすげぇ騒ぎになってさぁ」


本当に…


ネコを助けたんだ…。


かなめ君が教えてくれた事は、本当だったんだね…。


“ケンが言ってた”


ビックリ…。


またまた恐るべし、かなめ君。