「風花ごめんね…。本当は…風花は小学2年の冬休み、うちに泊まりに来てたんだよ」


「ばーちゃん…それは嘘だって……」


言ったよね…?


加瀬君が嘘をついてるんだって。


「あぁ。風花が思い出すのが怖かったんだよ…本当に悪い事をしたね…」


「私が…何を思い出すの…?」


ばーちゃんが、すまなそうに話してくれた。


でも、聞いてもじーちゃんを絶対に責めないでくれって…。


ドキドキした。


−小学2年の冬。


冬休み最後の日の夕方、


私はじーちゃんと手をつないで散歩をしていたらしい。


神社で賽銭を投げてお参りして、長い長い階段を二人で下りようとした時、


私が足を滑らせて階段を転がり落ちてしまった。


私は頭を縫う大怪我をし、それまでの記憶を失った−−−−…。


怒り狂ったのは私のお母さんで、じーちゃんを責めて責めて、二度とじーちゃんと私を会わせないと言った。


そして、じーちゃんは今も自分を責め続けてる。


私の頭に、傷を作ってしまった事を。


だから私に上手に接する事ができないとばーちゃんが言った。


「知らなかった……」


「おじいさん…本当は風花をかまいたくてしょうがないんだよ…わかってやってね……」


私は、泣きながら頷いた。


そんな過去が私にあったなんて信じられないけど…


じーちゃんの本心が痛いくらい伝わってきた。


「そういえばこの前…久しぶりにおじいさんが泣いてるとこを見たよ」


え…


じーちゃんが泣いてたの…?


「いつ…?」


「風花があの家を出て行く日だよ……」


私が…


出て行く日…?


あの日じーちゃんは、


部屋から出て来なかった。


泣いてたの………?


あのじーちゃんが……??


もう、ダメだ…。


また泣けてくる………


「ばーちゃん………私…帰りたい……。じーちゃんとばーちゃんのとこに……帰りたいよ……」


ばーちゃんに抱き着いて、ギュッとしがみついた。


じーちゃんの…傍にいたい…。