「電話しても出ないし、メールも返事来ない。先生に聞いても加瀬家の圧力がかかってるのか何も教えてくれないの」


加瀬家の圧力?


何それ。


「もしかして、加瀬君ちもお金持ち??」


「え?知らなかっの?加瀬君のお父さんは警視庁のお偉いさんだよ」


ほえ〜、警視庁〜?!


ビックリッ…


そんな立派なお父さんがいたんだっ…。


でも加瀬君、親とは仲良くないような事を言ってたよね…。


「父親が立派過ぎるのも嫌だね…」


私がそう言ったら、何も知らない良子はこう言った。


「え〜立派なお父さんの方がいいに決まってるじゃん。情けないお父さんのほうが嫌だよ」


情けないお父さん……


まさにうちのお父さん…。


夫婦喧嘩の原因は、ほとんどお父さんにあった。


でも私は、そんなお父さんを嫌いにはなれなかった。


それはやっぱり、血の繋がったお父さんだからかな。


私がお父さんの肩を持つと、お母さんが泣いて怒った。


だから、もうどっちの味方にもつかなかったんだ。


離婚が決まって二人が私のなすり合いをしてる時に、どっちの味方にもならなくてよかった…なんて冷静に思ったのを覚えてる…。


お父さんとお母さんは…


何で結婚して私を産んだのかなぁ…。


私を産んで、


ちょっとは幸せだった?


今日も青くて綺麗な空。


この広い空を見上げてる人はきっとたくさんいる。


もしかしたら、


お父さんとお母さんもどこかで見てるかもね。


もう二度と顔も見たくない人達だけど、


たまにふと、


会いたくなるんだ。


深が昔よく話してくれた事を思い出した。


“きっと違う世界の風花はお父さんとお母さんと仲良く暮らしてるよ”


深は真剣に“違う世界”の話しをしてくれるんだ。


自分と同じ人間が、違う世界で違う道を歩んでいるんだよって。


私には難しくてよくわからなかったけど、今なら少しわかる。


違う世界にいる私、


今日は幸せですか…?