結局、学校は一週間も休んだ。


家から一歩も出なかった。


あの公園にも行かなかった。


でもやっぱり、どうしても最後に海が見たくて家を飛び出した。


明日の朝、深が迎えに来る。


あの家を、出る。


最後に、もう一度あの景色を見ておきたい。


もうすぐ日が沈む。


オレンジ色の太陽が見たい。


走った。


一生懸命走った。


「…はぁっはぁっ…」


息が切れる…


やっとついた公園のブランコ。


私が好きだった場所。


別に二度と来れない訳じゃないけど、胸が痛い。


「ニャー…」


足元に猫がなすりついてきた。


「おまえも一人?」


猫を抱き上げようとしたら、しっぽを逆立てて逃げて行った。


猫にも嫌われた。


「あれ?」


猫が走って行った先に、見覚えのある男の子がいた。


確か…、かなめ君?だっけ。


猫を抱き上げて、こっちに来る。


かなめ君がポケットから携帯を出した。


MY携帯??


買ってもらったのかな?


今時の小学生ってすごいなぁ。


ブランコに座ってる私に、かなめ君が携帯を見せてきた。


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あのお兄ちゃんは?
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あのお兄ちゃんて、加瀬君の事かな?


しーらーなーい!


口を大きく開けて言ってみた。


伝わった様子。


またピコピコと文字を打って携帯を見せてくれた。


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一週間前、ケンがあのお兄ちゃんに助けてもらった言ってるんだ。ここに来たら会えると思ったんだけど。お姉ちゃんからありがとうって伝えておいて
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ケン………?


首を傾げたら、かなめ君が猫を私に近付けてケーンと口を動かした。


ハハ…


この猫が、教えてくれたって?


ありえないけど、子供の話をバカにする事はできない。