次の日から、学校を休んだ。


荷物をまとめて、一日でも早くこの家を出て行く為に。


こう思うのは、まだ私が子供だから?


投げやりになってるだけ?


でも、今までじーちゃんがいつも不機嫌だったのは、私のせいに違いない。


私がいなくなれば、じーちゃんはばーちゃんにも回りにも優しくなる。


はぁ。


自然とため息が増えちゃう。


荷造りをしてる間は、じーちゃんともばーちゃんとも口を聞かなかった。


ご飯の時も。


荷造りは3日でできた。


“いなくなろっか”


加瀬君の声が、頭の中でこだまする。


今なら本当にいなくなれるよ…。


そしたら深は、私を探すかな…。


深が言ってた“約束”を思い出した。


4年前。


私がここに来る日の朝、


深が私に言ったんだ。


“必ず迎えに行くから…。風花が高校を卒業したら結婚しよう”


これが深の言う約束なら、私は深と結婚する事になるのかな。


私はまだあの時、中学生だった。


この言葉は深が私を慰める為に言った言葉なんだって、幼心で思ってた。


深は、本気だったの?


私の未来は、もう決められてるのかな。


もしそうなら、つまらない未来だな。


深の事がずっと好きだったら、その未来はまた違って見えたのにね。


もう…私はあの頃の私じゃない。


4年という月日は私にとってものすごく長い月日だった。


知らない人、知らない土地、知らない道、知らない景色。


この環境に慣れるには、自分が強くなるしかなかった。


今まで持ってた物を、捨てるしかなかった。


新しい自分になるしかなかった。


だから深への気持ちも捨てた。


お父さんとお母さんへの想いも捨てた。


今度は、


じーちゃんとばーちゃんへの想いも捨てなきゃいけない?


私からどんどん過去がなくなっていく。


きっと、小学2年の時の記憶も…


こうやって捨てちゃったんだ…。