「おかえり」


私を無視してじーちゃんが居間に入って行った。


「風花もおいで」


深にそう言われ、私も深と一緒に居間に入った。


ドスンとあぐらをかくじーちゃん。


その前に、深が正座をして座った。


なになに…??


「お久しぶりです、望月さん」


深が、じーちゃんに向かって頭を下げた。


「何の用だ?」


「風花さんを、迎えに来ました」


え??


「深?!」


じーちゃんにまで、何でそんな事を言ってるの??


「親父の会社を正式に継ぐ事になりました。もう、僕でも大丈夫です。風花さんの面倒は、僕がみます」


「ちょっと深っ!」


「風花は黙ってて」


黙ってられないよっ、何で勝手に決めてるの??


じーちゃんは黙ったまま、まっすぐ深を見ている。


「4年前、望月さん言いましたよね?安定した生活が送れるようになったら来いって」


深が私を見て、ニコッと笑った。


何それ?!


もう…何が何だかサッパリわからない…


「随分遅かったじゃないか………」


じーちゃんがそう呟いて、笑った。


そして。


「これでやっとゆっくり老後を過ごせるわい。君が来てくれてよかった。肩の荷がやっとおりたよ…」


じーちゃん…


やっぱり…


そんなふうに思ってたんだ…


わかってたとはいえ、悲しい。


胸が…痛い…。


「いつ連れて行くんだ?」


「もう新しい家の準備はできています。今日でも明日でも…僕はかまいません。風花さんの準備ができたら連絡を下さい」


今日?


明日?


そんなに早く?


「わかった」


じーちゃんが立ち上がって居間を出て行った。


わかったって…


じーちゃんひどいよ…


堪えていた涙がボロボロ溢れてくる。


深は私の涙から、


また顔を背けた。