放課後のブランコ

「風花〜、こういう時は怯えて泣いてんのが女だろ〜?お前、なに凶器持ってんの…?!」


私から一歩、加瀬君が離れた。


「じゅ…純っ………!!」


オロオロし始めたギャル達。


私は放心状態で…加瀬君の後ろ姿を見つめた。


「お前ら…ほんと卑怯だね。俺、こういう事する女ってマジ許せねぇ」


「純っ…これはっ違う…」


一歩一歩近付く加瀬君に、後ずさりをするギャル達。


「何も違わねーよ。何で風花濡れてんの?誰かが水かけたんだろ?」


加瀬君が、トイレのドアをドカンッと蹴った。


それを見て、ギャル達は青い顔になって走ってトイレを出て行った。


びしょびしょに濡れてる私を、加瀬君が振り返った。


「大丈夫?」


「………うん」


「帰ろーぜ。今日こそ幽霊退治してやるから」


こんな状況なのにニコニコ笑う加瀬君を見て、ホッとする自分がいた。


しかも…。


「うん………」


素直に頷いちゃったし。


「とりあえず、ジャージに着替えようぜ。風邪ひくから」


黙ったまま教室に戻って、ジャージに着替えた。


廊下で加瀬君が待ってる。


それも、何だかくすぐったかった。


ジャージで帰ったら、ばーちゃんビックリするかな?


しかも加瀬君を連れて行ったら、どんな反応をするんだろう…。


廊下で待っててくれた加瀬君のとこに行って、本当にうちに来るのか聞いた。


「やっぱ今日髪の色直してくるから明日にしよっかな」


髪の色がまともだったら、ばーちゃんもビックリしないかな?


「ま、今日は帰ろうぜ」


「うん…」


一緒に、


帰ろう。


帰り道。


どうしてあのトイレに来たのか聞いてみた。


いつも自分を取り巻くギャル達と、私がいない事に気付いて嫌な予感がしたんだって。


で、


校舎中を探し回ってくれて、やっと見つけたら私がブラシを振り下ろそうとしてるとこだったらしい…。


今思えば…


「止めてくれてよかった」


本当にそう思う。