それからずっと、じーちゃんは私と口を聞いてくれなかった。


季節はどんどん寒さを増し、11月に入ってからはあっという間に日が暮れる。


それでも私は、学校帰りにいつもあの公園に寄った。


またいる・・・。


当たり前のように、ブランコに座って私を待ってる加瀬君。


あの日…、かなめ君騒動があった日から…、


加瀬君はよくこの公園に来るようになった。


「来た来た♪」


嬉しそうな顔してるし…。


「なぁ〜どうせここで会うんだから、明日は学校から一緒にここまで歩こうぜ〜」


「嫌だよ」


一緒に歩いたりなんかしたら、加瀬ファンに何て言われるかわかんない。


そんな事を加瀬君は気にも止めずに話しを続けた。


「いいだろ〜。どうせ家の方向も一緒じゃん」


「いーやっ」


絶対に嫌。


2階から花瓶を落とされちゃう。


私もブランコに座って、目の前に広がる海を見た。


もうすぐ日が沈む。


オレンジ色した太陽が、地平線に差し掛かった。


「今あの太陽をどれだけの人が見てるんだろな?」


まただ。


たまに、私が心の中で思った事を加瀬君が口にする。


私も今、同じ事を思ったんだ。


今、この公園には二人しかいない。


でもあの沈みかけた太陽を見てる人は、きっとまだたくさんいる。


「べたな話しだけどさー、今同じようにあの太陽を見てる奴は何万人といるはず。そいつらの中に…悩みがない人間なんて絶対にいない。風花も…その中の一人だろ?」


加瀬君が、チラッと私を見た。