「頼りなさそうな母親だなー。要まで俺みたいな男になっちまうぞ」


二人の後ろ姿を見ながら加瀬君がそう呟いた。


どういう意味だろ…。


加瀬君のお母さんも、頼りない感じなのかな?


気になるけど…、


もし私がそれを聞いたら私も自分自身の事を話さなきゃいけなくなりそう。


もう家に帰ろう。


余計な事は話したくない。


「じゃ………帰るから」


「待てよ、送ってやるから」


加瀬君がベンチに置いてある自分のカバンを取りに行った。


「送ってくれなくていい。もうすぐそこだから」


「すぐそこだから送ってやるんだよっ。遠かったら行かねーよ」


何だそれっ?!


普通逆じゃないっ?!


「ほら、行くぜ!」


わっ…


「ちょっと手っ…離してっ」


「やだよ」


加瀬君に手を引っ張られながら公園を出た。


「もうっ!!こういう事しないでっ、迷惑なんだからっ!!」


一番大切な事を忘れてた。


ここで蹴りをつけなきゃっ!!


でも、私が手を振り払ってるのに、加瀬君は離してくれない。


あーだこーだ言ってるうちに、家の前まで来てしまった。


「ありがとうなんて言わないからっ!!」


そう言って、思いっきり手を振り払った。


「懐かしいなぁ〜ばぁちゃん元気?」


…………え?


加瀬君に聞かれた言葉を、もう一度頭の中でリピートした。


“ばぁちゃん元気?”