「ねぇ…私の口…見て」


男の子の手を優しく握った。


「み み き こ え な い の…?」


大きく口を動かして聞いてみた。


男の子が、


ポロポロと涙を流しながら


頷いた。


………やっぱり。


「この子、耳が聞こえないんだって」


ビックリしてる加瀬君。


それと同時に、男の子の前に来てガクッと座り込んだ。


「ごめんな〜」


そう言って、加瀬君が自分の指で男の子の涙を拭いた。


「俺、こいつを無理やり喋らそうとしちゃった。怖かったよな〜…」


そりゃ怖かっただろうに。


こんなオレンジの頭して、見た目はヤンキーだもんね。


「この子、どこで見つけたの?ここ?」


加瀬君に聞いたら、首を振った。


「気付いたのは駅前の道。何か後ろからついてくるな〜と思ってたらさーこいつ俺から離れねーのっ」


「ねぇ、そういえばだけど何であんたがここにいるのっ!!」


急にムカッときて聞いてみた。


「あ、俺?俺は…偶然っ…笑」


偶然だぁ?!


お前の家もここらへんじゃねーだろっ…!!


と突っ込みたいけど、やめとこ。


相手になんかしたくない。


とにかくこの子をどうにかしなきゃ。


警察に連絡…?


あ、近くの交番に連れてく?


でもあそこのお巡りさん、いっつもいないんだよね。