「その…、暇な時でいいんだけど」

「おぅ」

「剣道、教えてほしいんだ」

「…剣道?」


(こいつ、剣道部だったよな?…ってことは、出来るだろ)


そんな彼の思いを読み取ったのか、優希は言葉を紡ぐ。


「先生や先輩とかも、ちゃんと教えてくれる」


でも、と優希はそらしていたはずの視線を合わせた。


「山下から教えてもらいたい。 …噂だけど、剣道で全国行ったっていうし」

「…んな噂流れてんのかよ」


顔をしかめていると、違うのか、と瞳を揺らす。そんな彼女に首を振った。


「確かに全国行ったけど…」

「……強く、なりたいんだ」

「工藤…?」


小さい呟きだったけれど、遥の耳にはしっかりと届いた。


「…あの子のためにも、自分のためにも」


そう力強く言い切った優希は決意に満ちあふれていた。

ごくり、喉を鳴らす。

彼は直感的に、強いと思った。

負けた、とでも言うかのようにため息をつく。


「……わかった、教えてやる」


横目で彼女を目にすると、パァッと顔を輝かせて、飾りない笑顔を遥に向けた。

それにドキリと心臓を動かす。


(やっば、可愛い…)


きっと耳まで真っ赤だ。