「………ほら」
遥は自身が手にしていた竹刀を彼女に手渡す。
それに礼を言い、両手で受け取った。
「……大丈夫か?」
「え?」
俯いていた顔を上げると、視界いっぱいに広がる心配そうな顔。
「怖がらせてごめんな」
(……山下?)
「あの時は、あぁするしかなかったんだ」
(……山下が助けに来てくれたときのことか)
ようやく、彼が言いたかったことを理解した優希はふるふると首を横に振る。
「あたしこそ、ごめん。疑ったりして…」
そう口にすると苦笑されたが、事実なので仕方がない。
「…それから、ありがとう。助けて、くれて」
ふわり、今までみせたことがないくらい、優しい微笑みを浮かべた。
遥は魅入ったように優希を見つめる。
あまりにも見られるものだから恥ずかしくなり、顔を朱に染めて視線を外した。
「なっ、何?」
ボソリ、恥ずかしさと戸惑いを混ぜた声で呟く。
すると遥は笑って、彼女の殴られた頬に優しく触れた。
瞬間、ピリッと一瞬痛みが走る。
「……殴られたとこ、痛いか?」
急に真面目顔をする彼に、ドキリとする。
「………これくらい、大丈夫」
本当は、痛い。
でもこれ以上心配させないために嘘をついた。


