「…次は殴られたりしない。……返り討ちにしてやる」


不敵に笑うと、彼女もフッと何処か安心したように微笑んだ。


「……ま、俺も手伝うぜ」

「山下…」


ポリポリと頬を掻く彼に、優希は目を見開かせる。


「…これも何かの縁だろ」


なんて、あらかさまに適当なことを抜かす遥に呆れた顔で返した。


「お前、何組だ?」

「え? よ、四組…です」


眉を下げながら、しどろもどろになる後輩ちゃん。


「ふーん…、んじゃ、たまに休み時間、俺と工藤で四組行くから」

「え!?」


岡部はビックリ、というふうに目を丸くした。


「しょうがねぇだろ。それしか方法がないし」


安心しろ、たまにだたまに、そういう彼も、一応彼女自身のプライバシーを気遣ってのことなのだろう。

チラリと目で確認をとる遥に、胸が一瞬苦しくなりながらもしっかりと頷いた。


(……また、だ)


ぐっと何かを隠すように押さえた。


「…お前も、怪しいと思ったらすぐに来いよ」

「はい…」


小声だったが、首を縦にちゃんと振る。


「俺は三組、んでこいつが…」

「同じ四組」


胸に当てていた手を素早く後ろに隠し、涼しげな顔をして答えた。


「…ほら、もう行った方がいい」

「はい。優希先輩、山下先輩、ありがとうございました」


深々とお辞儀をした彼女は、身を翻してパタパタと姿を消した。