(……全く、この子は)


どうしてこんなに優しいのだろうか。

先生にさえ言えば、この少女は助かるも同然なのに。

それなのに、それを選ばずにまた彼女からの助けもいらないと言う。


(我儘って言うか…、なんて言うか)


額を軽く押さえた。


「…せ、先輩?」


返事が返ってこないのが不安だったのだろう。恐る恐る、といったように優希の顔を覗き込んだ。


「……いいか、えっと…、岡部(オカベ)さん」


彼女の制服に付けられている名札を凝視した後、目を合わせる。

岡部という少女は、はいと行儀よく言うものの、その表情は固い。


「……さっきも言ったとおり気持ちは嬉しいが、でもそれでは何も解決しない」

「…っ!」


岡部も分かっていたのだろう。唇を噛み締めた。


「…先生には言わないんだったら、あたしが守るしかないじゃないか」 

「ですが先輩!」


それに、今度は優希が彼女の声に自身のを被せ、遮る。