「気持ちは嬉しいんだけど、もう時間が…」
時計のある方角を指させば、少女もそちらに目を見やり顔を小さく歪める。
しかしそれは一瞬で。
「心配いりません! 先生に事情を話せば…」
「それは駄目だ」
彼女がまた真剣な瞳で優希に言葉を発したが、今まで口を挟まなかった遥が、初めて間に入りそれを遮った。
「どうしてですか?」
不思議そうに、視線を彼女から遥に移す。
遥は呆れた顔をしながら、わかんねぇのか、とボソリと小さく呟くと口を開いた。
「お前、あの馬鹿共に絡まれてたんだろ?」
「……はい」
馬鹿共を強調した彼に少女は思わず苦笑し、一瞬の同情をあげたが別にそれを否定しようとはしない。
彼女は遥がそう言ったから頷いただけなのか、それとも本当に遥や優希と同じように馬鹿だと思っていたのか。
それは分からない。


