「……」
彼はふぅと短く息を吐き出すと、くるりと身体を反転させて優希に歩み寄る。
そして目の前で止まるので、竹刀を返してくれるのかと思ったのだが。
「阿呆がっ!」
怒鳴り声の方が先でした。
思わず両手で耳を塞ぐがあまり効果なし。
「何挑発してんだよ! そんなことしたらどうなるかぐらい分かってただろ!?」
「……」
何故朝から、しかもあまり面識がないやつに説教されなければならないのだ。
ムッと唇を尖らせたが、彼が言っていることは正しいので反論できない。
遥がもう一度ため息をついていると、ちょうどいいタイミングで、優希が助けた女の子が駆け寄ってきた。
「優希先輩!」
声の方に顔をぐいんと向けると、涙を流し、両手を祈るように組んでいる少女が目に入る。
(何も泣かなくても…)
優希は苦笑いしたが、彼女の恐怖と罪悪感が理解できていたので、何も言わなかった。


