コンプレックスなふたり☆



「……」


彼はふぅと短く息を吐き出すと、くるりと身体を反転させて優希に歩み寄る。

そして目の前で止まるので、竹刀を返してくれるのかと思ったのだが。


「阿呆がっ!」


怒鳴り声の方が先でした。

思わず両手で耳を塞ぐがあまり効果なし。


「何挑発してんだよ! そんなことしたらどうなるかぐらい分かってただろ!?」

「……」


何故朝から、しかもあまり面識がないやつに説教されなければならないのだ。

ムッと唇を尖らせたが、彼が言っていることは正しいので反論できない。


遥がもう一度ため息をついていると、ちょうどいいタイミングで、優希が助けた女の子が駆け寄ってきた。


「優希先輩!」


声の方に顔をぐいんと向けると、涙を流し、両手を祈るように組んでいる少女が目に入る。


(何も泣かなくても…)


優希は苦笑いしたが、彼女の恐怖と罪悪感が理解できていたので、何も言わなかった。