コンプレックスなふたり☆



「……汚い手で触んなよ」


彼は無言無表情のまま、髪の毛を掴んでいた手を離す。

そして、その拳が大きく振りあがった。


(あぁ…もう本当に駄目だ)


何やってんだろ、あたし…そうぼんやりと考えながら、目を閉じた。

けれど、それは瞬時にまた開かれることになる。


「……チッ、この馬鹿!」


突然、大声で罵られたかと思えば、パンッと高い音が耳をすり抜けた。


(竹刀の音…?)


目を開けば、ふらふらとしている男と、凛と背筋を伸ばして竹刀を構えている遥がいた。


「…てめぇ」


優希を縛っていたふたり分の手が完全に離れ、遥に矢が飛ぶ。


「先輩に楯突いたってことは…、覚悟は出来てんだろうな?」


体格のいい男は頭を打たれたらしく、未だふらふらしているため、もう闘うことは出来ないだろう。