(…っ、悔しい…)
眼中に入る遥と男を強く睨む。
「逃げられるとでも思ってんのか? 馬鹿だな、お前」
ニヤニヤと気持ち悪く口元を引っ張って、こちらに近づいてくる。
が、また優希はぴくりと眉を反応させた。
(……馬鹿?)
フッと笑みを浮かべる。
「……おい、何笑ってんだよ? ついに頭可笑しくなったか?」
髪の毛をぐっと引っ張られ、顔も一緒に上げさせられた。
優希は完璧に、彼を馬鹿にしていた。
「馬鹿?お前らこそ馬鹿だろ。女相手にこうでもしないと勝てないのか?」
「……」
そう彼女が発すると、瞬間に彼の瞳が鋭くなり、掴まれたままの髪の毛に力が入る。
それに顔を小さく歪めたが、一度声を出してしまえば止まるはずはなく、止めを刺した。


