コンプレックスなふたり☆



(…っ、悔しい…)


眼中に入る遥と男を強く睨む。


「逃げられるとでも思ってんのか? 馬鹿だな、お前」


ニヤニヤと気持ち悪く口元を引っ張って、こちらに近づいてくる。

が、また優希はぴくりと眉を反応させた。


(……馬鹿?)


フッと笑みを浮かべる。


「……おい、何笑ってんだよ? ついに頭可笑しくなったか?」


髪の毛をぐっと引っ張られ、顔も一緒に上げさせられた。

優希は完璧に、彼を馬鹿にしていた。


「馬鹿?お前らこそ馬鹿だろ。女相手にこうでもしないと勝てないのか?」

「……」


そう彼女が発すると、瞬間に彼の瞳が鋭くなり、掴まれたままの髪の毛に力が入る。

それに顔を小さく歪めたが、一度声を出してしまえば止まるはずはなく、止めを刺した。