(…そうだ。気のせいだ。だから変に期待をするな)
震えを相手に悟られないよう、足に力を入れて踏張る。
期待したい気持ちで山々だが、期待して殴られたときの絶望が大きい。
「…なんか恨みがあるのか、こいつに?」
もう彼は、遥のことを疑ってないみたいだ。
完全に心を許している。
「恨んではいませんよ、関わりがありませんから」
ただ、と言葉を区切る遥。
「……最近、色々あってむしゃくしゃしてまして、ストレスが溜まってるんですよ」
「…っ」
こちらを見ようとはせずに、何でもないことのように言う。
(…ほらみろ)
ギリと唇を噛むと、またじたばたと暴れる。
「おい、暴れんなよ!」
「抵抗しても無駄だぜ?」
暴れれば暴れるほど、腕を縛り付ける力が強くなっていった。


