♀優希side♀


彼女は、武道場では集中出来ないのでひとり外に出ていた。

周りは特に何もなく、あるのは少しの雑草と、元々は白かっただろう黄ばんだ壁だけ。

優希はふぅと意味もなくため息をついた。

少女が外に出てきた理由は素振りをするためなのだが、それならば普通は武道場ですればいいだろう。

だが、それが出来ないのだ。

武道場には学校のマドンナ青鳥海と工藤優希を見に来た人々で溢れている。

そのため、何かをするたびに騒がれる。

もう慣れたことだが、素振りをするときだけはどうしても静かにやりたかった。

だから優希は外に出てきたのだ。


(…皆暇なんだな、きっと)


じゃなきゃ普通、朝練がなくても此処まで来るか、と最初の頃は苦笑いしていたが、それもこう毎回来られると呆れを通りこして清々しい。