暫くの間意識を手と紙だけに集中していると、部活終了の予鈴のチャイムが鳴り響いた。

するとこの部の部長がガタリと椅子から立ち上がり、前に出る。


「これで朝練を終わりにします。解散!」


彼女はよく透る声で発すると、自分がさっきまでいた机に戻り、後片付けを始めた。

それにならうように周りも各自使った道具等を片付ける。

チラリと直哉の風景画に目をやったが、ほぼ鮮やかな色が塗られていて、もう終わりそうなところまできている様だ。

遥もデッサンは影までつけ終わり、後は修正するだけである。


「じゃあ、先に教室戻ってるからな」


ひとりでてきぱきと使っていた道具を元の位置に戻し終わった遥は、鞄片手にくるりと踵を返す。

彼の背に待ってくれよ!と叫ぶ親友の声を聞きながら、部室を後にした。


(今日はいつもより部活終わるの早かったから、結構時間あるな)


階段をおり、足は自分のクラスへと向かう。


(…鞄置いたら、外でも出てみるか)


意味もなく校内から出ることは基本的にありえないのだが、今日は不思議なことに出たくてたまらなかった。

そう思う自分に首を捻りながら、天気がいいからか?とまたもや不思議そうな表情をしていた彼は知らない。

裏切りものー!と耳障りなくらい声を張り上げ、そのせいで直哉が声が擦れるはめになったことを。



♂遥side♂