それは。


「……海先輩。何度言えば分かるんですか」


実に嫌そうな表情を浮かべ、そう言った張本人を見やる。


「いつもそう呼ぶの、止めて下さいと言ってるでしょう?」


鬱陶しそうに前髪を掻き上げる。

それだけでまた黄色い声が辺りを支配した。

彼女等はもうその声には慣れたとでも言う様に無視し、話しを続ける。


「…そんな怒らなくてもいいじゃない?」

「怒ってません。呆れてるんです」


しかめっ面のまま即答する少女、工藤優希(クドウユウキ)。


「あ、そうなの?」


天然パーマのショートへアを可愛く揺らしながら首を傾げる。

今度は女子ではなく、男子から逞しい雄叫びが上がったが、それさえもスルーするふたり。