「あのさ、橘……、」 甘い卵焼きが口内をふわっと駆ける。 「あたしさ…、記憶、ないんだ。」 「え…?」 「だから、記憶ないんだよ、何にも。うん、丁度5、6歳の時、ちょっと事故ってさ。だから、橘があたしを知っててもあたしは橘を知らない。ごめん」 でも、不思議なんだ。 橘になら、なんでも、素直な気持ちを吐き出せる気がする。 「俺…、葉山さんが思い出せるように頑張ります!もし思い出せなくても、胸を張って言います、俺は今の葉山さんが好きです!!!」 本当、素直で暑苦しくて、優しい奴だな。