溺愛プリンス


その姿はまるで……おとぎ話に出てくる”あの”シーンのようで……。


固まっていると、不思議そうなハルが顔を上げた。




「どうした? 履きにくいなら俺の肩に掴まれ」




あたしの手をとって、自分の肩に掴まらせたハル。
「志穂?」って、ブルーの瞳が不思議そうに瞬いて、ハッと我に返った。



「だ!大丈夫ですっ! 自分で……っわ!」



シルバーに輝くピンヒールのエナメルサンダル。

普段、こんなに高いヒールを履かないあたしは、案の定バランスを崩して……。
とっさに支えてくれたのは、ハル王子で……。



あたしを包む、甘ったるい香水の香り。
筋肉質の腕は、転びそうになったあたしをいとも簡単に抱え込む。

片腕の中にあたしを抱えたまま、ハルは呆れたようにため息をついた。


「だから言ったろ。ほんと、素直じゃないな」


恥ずかしさと、鏡の中に映る自分とハルの姿に顔が上げられない。



「……すみません……」


真っ赤になって俯いたまま、そそくさとその中から逃れた。
呆気なくその手を解放したハルは、鏡越しにあたしを覗き込む。



「いいみたいだな」

「はい……」

「じゃあ、これを」



ハルがあたし以上に頬を染めてぼんやりした店員さんに声をかける。
それを合図にお店の入り口で待機していたショーンさんが現れた。

店員さんに声をかけて、ふたりはレジの方へ行ってしまった。



…………。


……って! 見送ってる場合かあたし!