溺愛プリンス



「予定?」

「そ、そうですよ。あたしだっていつも暇してるって訳じゃないんですからね」


そう言ってツンと顔を背けると、鼻で笑われた気配がした。


な、なに?

チラリ。

視線だけ向けると、にっこりと極上の笑みが向けられる。


え?


たまらずたじろいだあたし。



「じゃあ聞いてあげるよ。 言ってみて?」

「へ?」


極上の微笑。
ハルの無言の圧力。



……ドク

ドクン ドクン



「……」


顔が整ってるからか、ただ見られてるだけなのにすごく緊張してしまう。

おどおどしていると、しびれを切らしたハルの顔から笑みが消え、真っ黒なオーラが背後から現れた。



「どうした? その予定とやらを聞いてやってるんだ。早く言え」

「……っ、……」




なんなの?
ほんとに、なんなのよぉ!

優しかったハルが、幻のように消えていく。
やっぱり、この真っ黒なオーラをまき散らしたのが、ハロルド王子という人なんだ!


「ゆ、夕方はバイトがあるんです!それまでは……その」

「なんだ。やっぱり暇なんじゃないか。だったらさっさとそう言え。ほんと、面倒なヤツ」


呆れたように大げさにため息をつくと、ハルはいきなりあたしの手首を掴んで歩き出した。


む。

面倒ってどういう事!!?



「ちょっと、どこ行くんですか?」

「黙ってついて来い。 バイトまでの時間を、俺が買ってやる」

「はあ!?」


な、なにそれなにそれ!


ムカつく!!!!
自分勝手だし、偉そうだし!
子供みたい!


すぐそばで待機していた真っ黒な高級車に押し込むように乗せられた。
目の前には、女の子達からの黄色い声に声援に応えるハルの笑顔。

その顔は、キラキラしてて、優しくて。
なんだかすごく腹が立った。