伝えたい……想い。
伝えられなかった、想い……。
ハルも、もしかしたらそんな想いを抱えてるんだろうか。
華やかに見える彼の生活は、本当は違うのかもしれない。
「……」
いつまでもいつまでもムーンロードを見つめるあたしの隣で、ハルは黙って傍に居てくれた。
どうして?ハル……。
今日はどうしてそんなに優しくしてくれるの?
海風が、長い髪をすく。
頬にかかるそれを払いのけると、ハルの視線があたしを捕えた。
「寒いか?」
「……うんん、平気」
フルフルと首をふると、それに応えるようにスッと目を細めたハルに、また胸がチクリと痛んだ。
そっと月の道を見上げる。
まるで、なにもかも夢みたいだ。
あやふやで、曖昧。
「想い……」
海風にさらわれた言葉。
ハルは聞こえていないのか、まっすぐに前を見据えたままだ。
あたしも同じように、ハルの視線の先を追いかける。
本当はずっと怖かったんだ……。
お父さんは、あたしに幻滅したまま逝ってしまったのかなって。
怖くて……誕生日を思い出すのも嫌で……夕暮れが、怖かったの……。
風がやみ、大海原がまるで鏡のように凪いでいる。