溺愛プリンス



「草介くん、なにから乗る?」

「ジェットコースター!」



キラキラの笑顔を振りまいて、草介くんは駆け出した。
ちょっと大人ぶってるとこあるけど、やっぱり年相応だよね。



「よぉーし! 篤さん、行きましょう!」



どんどん先に行く草介くんに追いかけながらあたし達の少し後ろを歩いていた篤さんを振り返った。

……あれ?



「篤さん?」



なんだかぼんやりしている篤さん。
あたしの声にハッと我に返ったように、何度も瞬きを繰り返した。


「大丈夫ですか?なんだか顔、真っ青ですよ?」

「ああ、ごめんね。なんでもないんだ、ただちょっと……」


歯切れが悪く、苦笑いを零した篤さん。
その腕を、いつのまにか戻ってきた草介くんがグイッと引っ張った。


「あつし!早く行こうぜ」

「草介!」


7歳の男の子のに、グイグイ連れて行かれる篤さんの姿を眺めていると、ハッとした。



ま、まさか……!











「篤さん、これ」

「……ああ、ありがとう。志穂ちゃん」


差し出したミネラルウォーターを受け取ると、篤さんはそれをそのまま額に当てた。

すぐそばのベンチでアイスクリームを頬張る草介くんから眺めながら、篤さんの隣へ腰を落とす。
あたしが座ったのと同時に、篤さんは気怠そうにベンチに投げ出していた体を起こし、ペットボトルの蓋をキュッと開けた。


「ごめんね、志穂ちゃん。俺こんなんで」



え?

小さなため息と共に吐き出された言葉に、ハッとして篤さんを見上げた。