溺愛プリンス



次の日。

待ち合わせは、篤さんのお店『月島』。



予定の時間よりも早くついてしまったあたしは、自動ドアのガラスで自分の姿をチェックする。

遊園地だし。
そんなに頑張りすぎない方がいいかなって色々悩んで……。

動いても平気なように、ミニのデニムにした。

梅雨の晴れ間。
青い青い空を見上げて、ギュッと胸を抑えた。



がんばれ、あたし。



と、その時だった。
お店の裏口から篤さんが顔を覗かせた。


「志穂ちゃん」

「あ、篤さんっ!」


驚いて慌てて振り返ると、いつもの作務衣姿じゃない、私服姿の篤さんが立っていて。
なんだか落ち着かない。

篤さんはあたしの前まで歩み寄ると、ニコリと笑った。


「おはよ。今日はごめんね?」

「いいえっ!とんでもないです。むしろ誘ってもらえてすごく嬉しいです」


身を乗り出して言うと、篤さんは少しだけ驚いたように瞬きを繰り返して、それからまたクシャリと笑みを零した。


「あはは。志穂ちゃんがそんなに遊園地好きだなんて、知らなかったなぁ」

「……」


伝わらない……。

で、でもでも!諦めないんだから。
草介くん、今日はちょっとだけあたしに頑張らせてよね!


もう一度そう決意して、あたしは篤さんの後をついて行った。






「篤さん、車!運転出来るんですね」

「出来るよー。俺もういい大人だからね」


駐車場に停まっていた四駆。
その助手席の窓から、草介くんが顔を出した。


「早くしろよぉ!」


後部座席に乗り込むと、草介くんにジロリと睨まれてしまった。


「お、おはよう。草介くん」


思いっきり引きつった笑顔を向けると、草介くんにツンと顔を背けられた。



う……。篤さんの隣……。