溺愛プリンス



「あつしぃーーー!オレあれ食っていい?」

「草介。ん、どれだ?」


草介くんのその言葉に、クシャリと笑顔になる篤さん。
身を屈めて、草介くんに手を引かれるままショーケースの中を覗き込んだ。


その中のひとつを草介くんに手渡したところで、ようやく椎香さんに向き直る。



「来るなら来るって、言ってくれればよかったのに」

「なによ!自分は全然連絡寄こさないくせにっ」

「ご、ごめん。忙しくて」



あはは、って苦笑いを零すと篤さんはポリッと首に手を当てた。



「まあ、別にいいけど。ねえ、約束覚えてくれてる?」

「へ?」



椎香さんの言葉にキョトンと首を傾げた篤さんは、考えるように宙を仰いだ。



「約束なんてしてたっけ?」

「もお、やっぱり。今日は中学の同窓会だって言ったら、明日まで草介見ててくれるって言ってたのお兄ちゃんなんだよ?」

「それは覚えてるけど……やば。来週かと思ってた……」

「はあ……大丈夫かな……。あ、そうだ」



大げさにため息をついて見せた椎香さんは、思い出したように大きな鞄に手を突っ込んだ。
すぐに引っ張りだした紙切れみたいなそれを、篤さんに差し出した。



「これ、遊園地のチケット。明日お店休みでしょ?草介連れてってやってくれないかな」

「え、俺が?」



椎香さんの指先で揺れているチケットを見て、眉間に深くシワを寄せた篤さん。
すぐそばで飛び上がって喜んでいる草介くんをチラリと見て、渋々受け取った。