『帰ります!』
と、そう言いかけたところで、その言葉が喉の奥に引っ込んでしまった。
「……ゴクリ」
かわりに出てきたのは、生唾。
あたしは、目の前の料理に釘づけになってしまった。
なんとも煌びやかな創作フレンチが並んでいる。
すごい……!
こ、このサーモンの上に乗っかってるのって……。
キャ……キャビア!
「食べないのか?」
「え……?」
やたら大きなお皿から視線を向けると、ハルが不思議そうな顔をして首を傾げた。
「……い、頂きます」
小さく顔の前で手を合わせると、そっとフォークとナイフを手にした。
う……。
テーブルマナーなんて、覚えてない。
慣れないながらに、なんとか料理を口に運ぶ。
うわ……
おいしぃぃぃい!
こんなの、食べた事ないっ。
さすが、超有名な高級ホテルだ。
ん。
あ、これってなんのジュレ?
中に何か……これってフカヒレだ。
やだもー、ほっぺた落ちちゃうよ~!
「……」
と、なぜか痛いくらいの視線を感じて顔を上げた。



