「志穂」
振り返ると同時に、ふっと部屋の照明が落ちた。
「……え」
驚いて、小さく悲鳴を上げた。
だけど、すぐに目に入ったのはキャンドルの灯りだけで照らされたテーブル。
そこにハルが座って、あたしを眺めていた。
……。
茫然としてるあたしに、ハルは目を細めて促した。
「いい顔だな。その顔を眺めるのも悪くないが、それよりもこっちへ来たらどうだ?」
えらそう……。
でも、今のあたしはまるで足が宙に浮いてるような感覚。
初めて見る、ロマンチックな雰囲気に、戸惑った。
ユルユルとテーブルのそばに行くと、ハルと対面してもうひとつ椅子が用意してある。
……こ、ここに座るのかな……。
躊躇していると、ショーンさんが来て、椅子をスッと引いてくれる。
「……あ、りがとうございます」
ペコリと頭を下げて、あたしはふかふかの椅子に納まった。
すぐに運ばれてきたボトル。
グラスを手にすると、綺麗な色の白ワインが注がれた。
キレイ……。
ワイン越しに、窓から夜景が見えた。
「それじゃ、まずは乾杯、だな」
ハルはあたしのグラスに向かって、その手を差し出す。
慌ててそれにこたえると、ワインの入ったグラスはチンと言う軽い音を立てた。



